INTERVIEW

――シングルス1の「平等院 VS ボルク」について、ご感想をお聞かせください。
今さら『テニプリ』でこういうことを言っても仕方がないんですけど、本当にテニスをしているのかなと思いました。発煙筒だらけの中にいるのかと思うくらい煙がすごくて、この光景を観客は一体どんな気持ちで観ているんだろうと(笑)。どうなっているのかわからない状況でしたけど、ある意味『テニプリ』らしいというか。こういうハチャメチャな要素も『テニプリ』の魅力のひとつだし、僕が好きなところでもあるので、とにかく初っ端からフルスロットルで面白いなと思いました。
――今回の平等院は、かつてないほどに必殺技を放っていましたね。
いろんな技名を言わせてもらいました。必殺技みたいなセリフを言うのは好きだから、僕は嬉しいんですけど、序盤の辺りではボルクに何を打っても響かないんですよ。こっちばかりがずっと頑張っていたから、もっとトネケン(利根健太朗さん)も声を出せよと思いました(笑)。平等院が「キサマの涼しい顔も見飽きたわ」とか言っていましたけど、本当にその通りでした。
――また、過去の修行など、これまでにない描写もいろいろとありました。
洞窟のようなところで修行しているのも謎でしたけど、六角中のオジイとのくだりは面白かったですね。まさか平等院とオジイに、あんな接点があったのかと思うと……。試合中、メンタル的に押し込まれているところは、自分でも「負けんのかな」っていう変な気持ちになりましたね。ああいう風に追い詰められたら、人って確かに心が折れそうになるだろうし、このままだと平等院が負けちゃうかもしれないと思いながらやっていたところもあります。
――高校生メンバーとのシーンについては、どのように感じましたか?
思ったよりもデュークと絡んでいたことがわかって面白かったです。冷静に考えちゃいけないんですけど、デュークと二人でちっちゃな船に乗って海外へ渡ろうとしているのは、あまりにも装備がなさすぎるので大丈夫なのかなと思ったりして。
あと、高校生組が平等院と海賊船に乗っていましたけど、なんやかんやそこも絆みたいなものがあるんだなと。高校生たちって作品的には突然現れた年長者で、ものすごい圧を出す奴らで、ちょっと変なチームだったけど、試合を重ねていくうちにまとまっていった感じがありますね。たぶん高校生組の役者さんたちも、そう感じているんじゃないでしょうか。
――対戦相手のボルクには、どんな印象をお持ちですか?
声優界屈指の毛量の利根健太朗が、まったく毛量のないキャラクターをやるっていうギャップが個人的にはちょっと面白かったです(笑)。それはそれとして、ボルクって何をしてくるのかわからない雰囲気があるじゃないですか。どことなく薄ら怖いというか。そういう人物が思った通りの力や強さで攻撃してくるから、試合をする前よりも途中で追い込まれている時の方がその怖さを感じましたね。それだけものすごい選手なんだと思います。
――日本代表の主将を務める平等院ですが、後輩たちへの姿勢にはどんなことを感じますか?
後輩への信頼はどんどん生まれていると思いますよ。でもそれ以上は、いろいろ思っていても彼自身は口にしない気がしますね。リョーマと徳川に檄を飛ばしたのも、平等院にしてみれば、頑張ってくれなきゃ困るからです。こっちはやるべきことをやって覚悟を見せたんだから、そっちも覚悟を見せてくれと。そういう気持ちだと思いながら、僕はやっていましたね。バトンの受け渡しというわけじゃないけど、あとは「お手並み拝見」っていう感じなのかなと。
――ところで、最終話には平等院の歌「Death Parade 〜どちらかを選べ!!〜」が流れましたね。
「嘘だろ」って思いました(笑)。曲自体は結構前にレコーディングしたんですけど、今回のリハ用ビデオの段階ですでに曲が入っていたので、他のキャストもこれを聴いているのかと思うと恥ずかしかったです。『テニプリ』って今までにもこういうシーンがあったから、今回は俺の番なのかと。原作ではモノローグみたいにいきなり歌詞が書いてありましたけど、それを見た音楽スタッフが慌てて曲を作ったらしいので、許斐先生のパッションがアニメに乗り移っているような気がして、そこは面白かったです。
――では『U-17 WORLD CUP』シリーズ全体を振り返ってみて思うことは?
原作の段階で初めからぶっ飛んでいる設定もあったし、デカ過ぎる人もいたけど、それがアニメ化されたら、ギリシャチーム全員を関(智一)さんが演じていたりと、漫画の魅力を理解したアニメスタッフが、さらにアニメの力を注ぎ込んでいましたよね。そうした作品に関わることができて嬉しい気持ちがありますし、何よりもまず楽しかったです。僕は『テニプリ』の一番の軸はヒューマンドラマだと思っているので、そういうところでの感動もあります。もちろん辛い試合や過去話も描かれますが、トータルでは『テニプリ』の世界観って楽しいなと、毎回再確認しているようなシリーズだったと思いますね。
ただ、「デカすぎんだろ…。」は俺が言いたかったです。大好きなシーンなので(笑)。
――今回のシリーズの収録現場はどのような雰囲気でしたか?
自分よりも先輩の方々が多いし、しかも僕が若い頃から良くしてくださっている方々ばかりなので、信頼できる方しかいない楽しい現場です。長く続いている作品だから、すでに出来上がっている世界観の中に、仲間として入れてもらったような気持ちがあります。作品の中では主人公より年上の主将という役どころですけど、現場ではみんなが僕をそういうポジションにしてくれたというか。もちろん僕も主将然として演じていますけど、そんな平等院をみんなが主将として受け入れてくれたから成り立っているので、それもまた現場のチームプレーだと思います。
――最後に『テニプリ』ファンへのメッセージをお願いします。
皆さんが観て面白いと感じるところがひとつでもあれば、作品としてはそれで正解じゃないかなと。実際そうなるように作られていると思うし、僕たち演者もそうなるように一生懸命やっていたと思います。なので、僕らが何かをオススメするよりも、皆さんが感じたものを大事にしてもらえれば、たぶん自然と「もう1回観たいな」と思っていただけるような気がします。注目点はいっぱいありますから、自由に楽しんでください。

――シングルス1の「平等院VS ボルク」について、ご感想をお聞かせください。
熱い展開でしたね。平等院の最初のサーブからもうクライマックス感が強くて、最後の試合らしく始まったと思ったら、そこからさらに怒涛の展開が続いて、ずっとクライマックスのピークにいるような気がする試合でした。僕自身、ボルクとしてその試合で演じているはずなのに、完成映像はずっと胸アツな状態で観させていただきました。
――試合中のボルクについて、印象に残っているところはありますか?
最初は平等院を品定めするような感じだったボルクが、そうも言っていられない状況になり、ようやく汗をかくシーンですね。平等院に「やっと汗をかきやがったな」と言われて、一筋の汗が流れ落ちたところからボルクのギアが入ったなと感じられて面白かったです。
あと、序盤でボルクが若干優勢になっていた時、平等院に対して「どうした海賊…立て!」と煽るシーンがありましたが、あそこは「もっと楽しませてくれよ、みたいな感じで」とディレクションがあって、なるほどなと。ボルクは勝利の哲学者だから、とにかく勝つことが第一の目標だったけど、試合をしていく中で、平等院とのテニスをもっと楽しみたい心境になっていった。その変化がすごく印象的でした。
――そうした熱いプレーを演じた収録現場は、どのような感じでしたか?
平等院が「Gargantua hail in Libiya(ガルガンチュア・ヘイル・イン・リビア)」 という技でとんでもない数の球を打ってきて、ボルクがとんでもないスピードで打ち返しますが、そのシーンの収録が印象深いです。2〜3秒くらいの短いシーンですけど、打ち返す息のアドリブを連続して収録しました。同じテンポで10回繰り返してくださいと指示をいただいたので「はっ! はっ! はっ! はっ!」って。オンエアではどうなるんだろうと思ったら、その息をギュッと詰めて迫力ある感じにしてくださったので、これは熱いシーンになったなと思いました。
平等院とボルクは一緒に収録させていただきましたが、僕と安元さんはマイク1本分空けて、少し離れたところに立ったので、間にあるマイクがテニスコートのネットみたいな感覚になりました。そこで安元さんの熱量とか芝居のパワーを感じていたんですけど、ボルクは終盤までクールに戦っていたので、安元さんから「お前はもっと汗かけよ」と言われていました(笑)。
――では、対戦相手の平等院には、どんな印象をお持ちですか?
あんなに傍若無人な感じなのに、試合中は後輩たちが「お頭!」って叫んでいて、チームメイトには慕われているんだなと改めて感じました。あと、泥臭い戦い方をする平等院の姿は、敵ながらこみ上げてくるものがありました。「精神力が強すぎる」ってどういうことかと思っていたら、強すぎる精神力を一度壊すために精神レベルを低くして死の淵から甦ってくるという……その戦略もすごいなと(笑)。そういう一か八かの賭けに出てギリギリのラインで戦っている平等院と、最初は高みにいたボルクが、段々と横並びになっていくところが面白かったです。やっぱりボルクも平等院の熱量に引っ張られたんだと思います。
――ボルクは手塚とのエピソードもありましたが、二人の関係性については?
手塚の才能に惚れ込んで、わざわざ探し回ったくらいですから、彼がチームメイトになったことは、ボルクも嬉しかったんだと思います。ボルクは手塚と一緒にトレーニングを積みながら彼の能力を吸収し、今回の試合では一人で「能力共鳴(ハウリング)」を起こすというとんでもない技を見せた。ボルクは自分を高めるために手塚を利用したのかもしれないけど、手塚も武者修行のために最強のドイツチームに入ったわけだから、最初はお互いにちょっと打算的なところもあったと思うんです。でも、同じチームで絆とか信頼みたいなものを築いたから、シングルスの重要なポジションを手塚に任せるまでになったのかなと。ボルクはたぶん、手塚国光という人間が好きだと思うんですよね。試合の最後にボルクの走馬灯が流れるシーンがありますが、そこに「クニミツ」も出てきたので(笑)。
――ドイツ代表の主将役として、準決勝の試合結果をどう受けとめていますか?
負けて悔しくないわけではないですが、ひとつひとつの試合を振り返ると、どっちが勝っても負けてもおかしくない熱い戦いばかりだったので、“やりきった感”はドイツチームにも日本チームにもあったと思います。最後にレンドール監督が日本代表を見て「今回は彼らの勝利を讃えよう。君たちが今まで讃えられてきたように」って言うんですけど、あれも全力でやりきったからこそ出てきた素直な気持ちだなと。すごくいいセリフだなと思いました。
――『U-17 WORLD CUP』シリーズへのご出演を振り返ってみて、改めてどんなことを感じますか?
長く『テニプリ』に携わってきた先輩たちが、新たに登場した各国チームのキャスト陣が入りやすい空気感を現場で作ってくださっていて有り難かったです。収録自体も本当に楽しくやらせていただきました。そこで自分はラスボスのような存在となるポジションだったので、これまで観る側としては大好きだった日本代表メンバーへの情を一旦捨てて、絶対に負けないドイツの強さみたいなものを誇示していこうと強く意識しましたね。
あと、今回はドイツメンバーのユニットでエンディングテーマも歌いましたが、声優としてやれることをいろいろと経験させていただけたのは、やっぱり『テニプリ』ならではだなと思いました。そういう意味でも『テニプリ』は思い出深い作品になりました。
――最後に『テニプリ』ファンへのメッセージをお願いします。
最後までご視聴いただき、本当にありがとうございました。ドイツ代表の活躍は今回で一区切りとなりますが、これだけの熱い試合を繰り広げたわけですから、ときどきは思い出して、何回でも観返していただけると嬉しいところです。これからは僕自身も決勝に向かって突き進んでいく日本代表を応援する側となり、皆さんと一緒にこの作品の行く末を観届けていきたいなと思っております。Danke schön!