原作/許斐剛
跡部景吾役/諏訪部順一
幸村精市役/永井幸子
氷帝と立海、両チームの「世代交代」に思うこと
永井玉川よしおが出てきたことが、立海にとっては“新しい風”だなと思いました。
諏訪部立海レギュラーには切原しか後輩メンバーはいなかったですからね。
永井玉川がどういう人物なのか、私たちも全然知らなかったので、こんなに真っ直ぐでちょっと気の弱そうな男の子が、今まで立海にいたんだっていうこともすごく新鮮でした。
諏訪部アクの強い人ばかりですからね。あの濃い先輩たちの圧に、よくぞ耐えてくれました!って感じ(笑)
永井ホントに!あの立海の中で、よく今まで頑張ってきたなと(笑)。玉川が自分の武器であるロブと向き合うドラマチックな展開も熱いなと思いました。
許斐あの頑張りを見ていたら、立海の1年生とか同級生たちも何か感じるものがあったかもしれないね。
永井そういう意味でも、本当に“新しい風”でしたね。立海はこうして未来へ向かっていくんだなぁと、ちょっとした寂しさと共に時が流れていくのを実感しました。
許斐そうなんですよ。今回はちょっと寂しい感じがします。
諏訪部「卒業」を感じさせる空気が漂うのは、やはり切なく寂しい気持ちになります。
許斐まだ後輩にバトンを渡したくないっていう3年生たちの気持ちが、すごくわかるような気がします。
諏訪部氷帝はすでに日吉が新部長となり、組織的には代替わりしてる感じでしたね。
許斐あの樺地がパソコンとか使っているよ…って思いました。
諏訪部でも樺地は地道な作業は得意そうですよね。趣味はボトルシップ作りですし(笑)。周りの支えも陰ながらあったと思いますが、ここまで跡部の1トップ体制でやってきた氷帝。次世代は日吉と鳳と樺地が3人で協力しながら部をまとめていく感じになるようですね。これまでとは随分と雰囲気の違うチームになるんじゃないでしょうか。
永井あの夕陽に染まる教室で3人が相談しているシーンとか、ちょっといいですよね。
許斐ああいうひとつひとつの描写が泣けるんですよ。
諏訪部そうですね。
永井私もそれに尽きます。切ないですよね。でも、作品を前に向けて進めていこうとする許斐先生の思いもすごく伝わってくるし。
諏訪部そういえば、氷帝は2年生のうちにレギュラー経験を積み、大きく成長した人間が3人もいるわけで。立海よりも多い!
永井ヤバい!(笑)
諏訪部次世代の氷帝と立海のパワーバランスはどうなるのか、楽しみです。
跡部と幸村、二人のキャラクター像について
許斐跡部はとにかくナルシストなイメージで、ちょっと嫌味な感じも含めたキャラクターとして作りました。でも、実際はすごい努力家だし、他の人たちのことをよく見ているので、お話が進むにつれて、チャラい奴ではない部分が出てきましたよね。面倒見が良かったり、先輩や先生には礼儀正しかったりと、しっかりした部分もあるので。
諏訪部初登場時はとんでもなくチャラかったですね。ストリートテニス中の桃城たちにいやらしく絡んだりして(笑)。
許斐そういったキャラクターをグレードアップしてくれたのは、諏訪部さんだったり、ファンの応援だったり、『テニプリ』のいろいろなコンテンツだったりするので、その期待に応えられるように、こちらも彼の話を作っていった感じでした。幸村に関しては、さちん(永井)とライブで話した時に「幸村は試合をしないと思っていた」って言っていたのを覚えていますね。そう思っていたのに、こんなに大事な役が回ってきたことでプレッシャーになって、カチロー役の中川(玲)さんに泣きついたという話を聞いて…。
永井全国大会決勝戦はもう本当にプレッシャーでしたから。
許斐そうやって悩みながらも大役を果たしてくれて、今ではもう「幸村は永井さんじゃないと」って思えるくらいハマっていると思います。確かに最初は、試合をしないやさしいイメージで作っていたキャラクターだったけど、今では芯が強くて、人生も何もかもすべてにおいて諦めない、という強いイメージに変わったかなと。それは原作での彼の「色々諦めなくてよかった」っていう一言に尽きる。すべて諦めずにここまで来られたから、病気も完治した今の彼があるんじゃないかと思います。
最近、跡部と幸村って正反対のようで、じつは似ている部分もあるのかなと感じるんですよ。跡部はまわりに慕われているというか、氷帝部員たちには「跡部に褒められたい」とか「跡部に認められたら嬉しい」っていう気持ちがあるんだけど、考えてみたら立海部員たちも「幸村に褒められたい」って思っているかなと。そういう存在感が似ている気がしました。
諏訪部跡部も幸村も抜群のカリスマ性がありますから、部の中での存在感は確かに近いものがあるかもしれません。
許斐たぶん真田ですら、幸村に褒められたいんだろうなと。
永井真田かわいいな(笑)。
許斐じゃあ、青学のメンバーは手塚に褒められたいかっていったら、そんなことは考えていないと思うんですよ。
諏訪部部を統べるリーダー、テニスプレーヤーとしては尊敬されているけれど……青学メンバーは、手塚から褒められたいというより、手塚に怒られないようにしようと思っているのかもしれないですね。別の意味の孤高(笑)。
永井跡部と幸村は、表から見た印象はかなり違うんですけどね。幸村は両サイドに真田と柳がいてくれるから、部員たちに直接何かを言わなくても良い時があるし。
諏訪部水戸黄門の助さん格さんみたいな感じ(笑)。
永井「ここぞ」という時だけ出ていけばいいというか。あと、幸村は病気を抱えていたから、まずは自分のことを第一に考えて、その一生懸命やっている背中で部員たちを導いてきたところもあるかなと。それが成立していたのは、3強(幸村、真田、柳)のしっかりした関係性があるからだと思います。
諏訪部氷帝も立海もチームとしてちゃんと成立してきたわけで。それは、カリスマ部長のもと良い人間関係が部内で育まれていた証拠ではないかと。
許斐今回の『氷帝vs立海』では、そうした関係性もピックアップしているというのを、観ている人たちもたぶん実感してくれたんじゃないかなと思います。それぞれの学校がどういう風にまとまっていて、今後はどう進んでいくのか、というのを感じさせる部分が散りばめられているので…。観終わると「もう終わっちゃったの?」って思うくらい、もっと観たくもなるんですけど。
諏訪部それぞれの関係性みたいなものが改めて掘り下げられた感は確かにありましたね。試合が終わった樺地に跡部がタオルを渡す時の声かけも、今までよりちょっとやさしさが感じられたり。同じ氷帝学園中テニス部のメンバーとしてプレーするのはこれが最後ですから、やはりああなりますよね。
許斐今までは跡部が「樺地、タオルだ」って言う方だったけど、逆にタオルを差し出してあげるという…。そこに彼らの成長とか、今後への期待を託している気持ちを感じて、本当に泣けるシーンになりました。「ウス」の一言で、それだけの感情を演じている鶴岡(聡)さんもすごいなと。
諏訪部「ウス」だけで喜怒哀楽すべてを表現できますから、樺地は。
許斐タオルの向こう側ではきっと泣いているんだろうなと、ちゃんと想像させられました。