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『新テニスの王子様 氷帝vs立海 Game of Future』
許斐先生×川口監督×広田さん(脚本家)

座談会のようす

原作/許斐剛
監督/川口敬一郎
シリーズ構成・脚本/広田光毅

誰に試合をさせるのか? オーダー作りの苦しみとは

座談会のようす

広田どうしても試合をしないキャラクターは出てきますからね。

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許斐難しいですよね。今ではどこも人気校で、それぞれのキャラクターにファンがついているので、この人とペアを組んでほしいとか、逆にシングルスで観たいとか、そういう声がいっぱい届くわけですよ。その中でどれを選択するにしても、できるだけ皆さんが喜ぶものを作るというのはすごく責任がありますし、結構大変な作業でした。

川口先生に相談する前の、スタッフでの会議でも対戦カードはめっちゃ揉めました。

広田それぞれに思い入れがありますし、限られた試合の枠に誰を出すかというのは、絶対に喜ぶファンもいれば「なんで!?」と思うファンもいるはずです。そこを考えながら進めていくと「許斐剛・完全監修」は我々の切り札なんですよ(笑)。

許斐だからこそ、こっちは真剣に取り組んで、スタッフの皆さんと何度もやりとりをして時間をかけましたね。

川口最終的にはベストなマッチングになったと思います。

許斐やっぱり勝負にはいろんな勝ち負けがあって、勝たせたいキャラクターも負けられないキャラクターもいるわけですよ。サプライズであっと言わせたい戦いとか色々ある中で、どれをチョイスするのか考えるのは大変だったけど、やり甲斐はありました。最終的には自分の中で考えたものがブレずにピタッとハマったので、そこはよかったなと思います。私がブレたら、アニメスタッフの皆さんも迷ってしまいますからね。

広田オーダーが決まってから、大まかな試合の流れが決まるまで3か月くらいかかりましたよね。

許斐最後に「これで行きます」っていうオーダーを提出して、これで受け入れてもらえないなら「許斐剛・完全監修」は外してもらおうと思っていました。そしたら2か月くらい連絡が来なかったんですよ。これは揉めているのかなと(笑)。どうしようかなと思っていたらシナリオが上がってきて、私のオーダー通りになっていたので受け入れてもらえたんだなと。

広田ある程度、完成した形で許斐先生に見ていただこうと思っていたんですよ。

許斐その2か月はすごく心配でした。

勝者と敗者のドラマ作りで意識していること

許斐そこはファンにとってもデリケートなところで、どんなにいい試合内容を展開させても、最終的な結果が印象に残ります。単純に勝った方が強いと判断されがちですけど、当日のコンディションだったり、相手との相性だったり、そうした影響でトッププロでも負けることはあります。そこはわかってほしいんですけど、漫画やアニメでは一発勝負のような印象になることがあるんですよね。だから、負けてもなおカッコいいとか、戦う双方のファンが納得するものを作るというのは永遠の課題で、今もそこは頑張って研究しているところです。

川口監督の画像

川口僕は『BEST GAMES!!』シリーズをやらせてもらって感じたんですけど、終わってみると、負けているキャラクターに「負けた印象」があまりないんですよね。すごくいい試合をしているし、ある一面では勝っている部分もあったりするので。そこの作り方が許斐先生の巧いところだなと思うので、今回のオーダー作りでも、どう戦わせてどう勝たせるかというのは、僕も納得できる対決でまとめていただけたなと思います。

許斐それはよかったです。

川口負ける側にも「ただでは負けていない」という部分が必ずあるので、そこはアニメの演出でも大事にしていますね。もう少し試合が続いていたら違う結果になっていたかもしれない…という感じで、先に向けての可能性を残すとか。勝った側も、勝ったとは言えない表情を見せていたりして。

許斐そうなんですよね。ただ、接戦をしたとしても、アニメで大番狂わせが起こってしまうのはダメだと私は思っています。原作で培ってきたものや、読んでいる読者と作ってきた信頼関係を突き崩すことがあるとしたら、それをやっていいのは原作だけだと思うので。アニメがそれをやってしまって批判されるのは私も不本意だし、アニメにはアニメの良さがありますからね。原作にない部分を補填してもらったり、動きと音楽とセリフが付くことで胸に迫るものがあったり。アニメの表現であっと言わせる展開はありだけど、本当の意味でのサプライズは、あくまでも原作でやるべきだなと思います。

広田さんの画像

広田王道ですけど、勝者には勝者の、敗者には敗者の理由があるというのが大前提ですよね。『テニスの王子様』には「試合には負けたけど勝負には勝っている」という描写も多々ありますし、みんな常に全力で戦っている。今回の氷帝と立海も長い間ライバルだけど、ワールドカップでは一緒に戦っているので、お互いのポテンシャルをわかっている。勝ったことに驕ったり、負けた側にツバを吐くような人たちではないので、そういうところはすごく大事にしようと意識しました。

両校のトップ、跡部と幸村の部長としての在り方とは?

許斐先生の画像

広田ネタバレを考慮すると難しいところですが、今回は二人の魅力とか部長としての在り方が全部入っていますよね。ワールドカップを経た二人がどうなっているかというのもポイントです。

許斐先生の画像

許斐今回は次世代にバトンを渡すような試合なので、卒業を間近に控えていることで、部長なんだけれど「元・部長」みたいなところもあり、「新・部長」に対して自らの背中を見せたりもしている。そこが大きなドラマだと思いますね。跡部と幸村がそれぞれに違う形で、部長としての在り方を後輩たちに示している。

川口個人的には跡部と日吉のシーンがものすごくエモいので、期待していただきたいです。これまでの原作やアニメでも跡部の「後輩思い」の部分は描かれてきましたけど、今回はそこが全面に出ていますね。試合以外のシーンも結構あって、これまでのTVシリーズやOVAではあまり描かれていなかった教室での様子とか、中学生らしいシーンもあるので、その辺を作るのは楽しかったですね。一方の立海は、幸村個人というよりビッグ3(幸村、真田、柳)が後輩を思っているという感じかなと。そこで3人らしい方針が見えたりするので、両校それぞれに違う見せ方をしています。

広田たとえば赤也にとって、ビッグ3以外に認めているのは越前リョーマくらいだったけど、ワールドカップで色々な選手を見てきた中で、彼の意識がどう変わっているのかも見どころのひとつかなと思いますね。そういう意味では、彼も今回の氷帝戦で魅力が増しているような気がします。